ドイツの玩具 谷克二


テディベア誕生の地

 緑のうねりが、夏の陽光にきらめいていた。視野のとどくかぎり、どこまでもひろがっている。ギンゲンの町は、その丘(うねり)のひとつにポツンとちいさく座っていた。テディベア誕生の地である。「シュタイフ社はすぐに見つかるよ」それほど小じんまりした町だとドイツ人の友人は強調したが、車で走り込んでみたら迷ってしまった。穏やかなギンゲンの住人が、「アアイッテ、コウイッテ」としきりに手をうごかしながら親切に道順を教えてくれた。シュタイフ社はほどなく見つかった。思ったよりはるかに大きな工場だった。案内された応接ロビーは、ショールームも兼ねていた。テディベアはもちろんのこと、キリン、シマウマ、サル、サイ、ゾウからアリクイまで大小さまざまなかたちで並んでて、陳列棚は色彩の氾濫だった。「ワァ、コリャ、子供たちにとっちゃ天国だワ!」驚きのあまり棒立ちになりながら、私はそう思った。
 待つほどもなく、広報担当のラウシャ氏が入ってきた。金髪碧眼、白晢長身の美男子である。満面に笑みをうかべて「ようこそ」と右手をさしだし、握手をしながら「時間にあまり余裕がない。すぐに作業現場にいきましょう」つづけた。セッカチなのではない。この日から三日間、ギンゲンではテディベアの生みの親でシュタイフ社の創設者でもあるマーガレット・シュタイフの生誕百五十年祭が催され、テディベアのオークションも開かれる。ラウシャ氏は祭の責任者なのである。


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